SKELETON & INFILL──変わり続ける建築の可能性
建築とは、本来、長い年月を経てもなお存続するものだ。特にスケルトン(構造躯体)は数百年の耐久性を担うものであり、その頑強な骨格が建築の寿命を支えている。一方で、インフィル(内装空間)は、時代や用途の変化に応じて常に変わり続けるものだ。
当初の設計プログラムが、そのままの用途で使われ続けることは少ない。かつて学校として設計された建物がホテルに生まれ変わり、オフィスとして建てられた空間がゴルフスタジオへと姿を変える。これは、建築が社会のニーズに適応し続ける証であり、むしろ変化することを前提とした設計のあり方が求められていることを示している。
(水産加工場だった建物をRestaurant BARにコンバージョンした事例)
変わることを前提とした建築設計と法整備の必要性
こうした柔軟な建築のあり方を実現するには、変化を許容できるスケルトン躯体の設計と用途変更を容易にする法整備の両輪が必要となる。
現在の建築基準は、新築時の用途を前提としたものが多く、用途変更時には大きな制約が伴う。たとえば、オフィスビルを住宅や商業施設に転用しようとすれば、新たな規制が適用され、法適合のための改修が必要となる。しかし、そのハードルが高すぎるために、多くの建物が用途転換の可能性を持ちながらも、実現できずにいる。
この状況を打破するには、スケルトン(構造)とインフィル(内装)を分けて考え、構造躯体は長期間使用できるよう設計し、内装や設備はフレキシブルに変更可能とする設計思想が必要だ。さらに、建築のライフサイクルを考慮した用途変更を前提とした法制度の整備が求められる。
耐震補強の現実的なアプローチ
建築の長寿命化を考える上で、耐震性能の確保は不可欠な要素である。しかし、現実的な課題として、耐震改修工事のコストが高すぎることが、多くの建物が改修を進められない原因となっている。
たとえば、東京都の耐震指針では、既存不適格建築物に対して耐震性能0.6以上を求める基準がある。しかし、この基準を満たすための工事費は非常に高額になり、国や自治体からの補助金も十分でないことが多い。その結果、補強工事が進まず、建物の安全性向上が滞るという矛盾が生じている。
理想を追求することは重要だが、経済的に現実的な耐震補強の方法を導入し、より多くの建物が少しずつでも補強を進められる仕組みを整えることこそが、都市全体の安全性向上につながるのではないだろうか。
「壊す」から「活かす」へ──建築の未来を見据えて
建築は一度完成すれば終わりではなく、時代とともに変化しながら使われ続けるものだ。スケルトン&インフィルという考え方を取り入れることで、建物はより長く、より柔軟に、社会に適応し続けることができる。
私たちの目指す「REVIVE」事業は、単なるリノベーションではなく、「変化し続けることができる建築のあり方」を実現するためのプロジェクトでもある。用途の転換を前提としたスケルトンの設計、柔軟な法制度、現実的な耐震補強のあり方を追求しながら、「その街に必要とされる建築」に蘇らせていく。
壊すのではなく、活かす。建築の未来は、そこにある。